ザンヨメ💀残高余命

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「5年働けば年金が3万円増える」は本当なのか?受給開始を遅らせる本当の「コスト」

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「5年働けば年金が3万円増える」は本当なのか?受給開始を遅らせる本当の「コスト」

ねんきん定期便が届くたびに、ため息混じりに数字を眺めてしまう人は多いはずだ。

そこに書かれている見込み額を比較すると、誰もがひとつの誘惑にかられる。

その差は、月々3万円。年間にして36万円の開きが出る。「少し無理をしてでも5年間長く働いて、年金を増やした方が絶対に得だ」と思ってしまうのも無理はない。皆が65歳まで働いているのだから、それがきっと正しい選択なのだろう、と。

しかし、私はある決定的な疑問を持つようになった。

「本当に65歳になった時点でも、その差は3万円のままなのだろうか?」

物価上昇で縮まる「額面の差」

ここ数年、私たちの生活実感として物価の手触りは大きく変わった。かつて120円ほどで買えたコンビニのおにぎりは今や200円に迫り、お米も、外食も、宿泊代も容赦なく上がっている。

日本の年金には、物価や現役世代の賃金に合わせて年金額を改定する「マクロ経済スライド」という仕組みがある。物価が上がれば、年金の額面も少しずつ増えるのだ。

つまり、60歳時点で「12.5万円」だった年金は、5年後の65歳になったとき、12.5万円のままではない。仮に年 2%ずつの物価スライドがあると想定すると、60歳受給組の年金は5年後に約13.8万円まで膨らんでいる計算になる。

となると、65歳時点での実際の比較はこうなる。

実質的な差は「3万円」ではなく、「約1.7万円」にまで縮まっているのだ。

先にもらえる「750万円」がもたらす圧倒的格差

さらに、もう一歩踏み込んで考えてみよう。60歳で受給を始めた人は、65歳になるまでの5年間(60か月)で、すでに年金を受け取り続けている。

彼らは、65歳まで働き詰めている人が1円も得ていない間に、すでに約750万円という大金を手にし、自由に使っている。

ここで、日本の「平均寿命」という現実的な数字を当てはめてみたい。厚生労働省のデータによると、現在の日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳だ。男女全体の平均をとっておおむね「84歳」と仮定しよう。 65歳から 84歳までの19年間(228か月)で、この750万円を均等に割ってみると、驚くべき数字が見えてくる。

比較してみてほしい。65歳まで我慢して増やせる年金は、物価連動を加味すると実質「月々約1.7万円」。対して、60歳から先にもらった750万円を平均寿命まで切り崩して上乗せできる価値は「月々約3.3万円」。

「3.3万円」が「1.7万円」を完全にオーバーウエイト(圧倒)しているのだ。

平均寿命まで生きたとしても、65歳から受給を始めた人は、60歳受給組が手にした「750万円の貯金(月々3.3万円相当)」の価値に遠く及ばない。

では、この1.7万円の差で750万円を回収し、65歳受給組が「得」をするには、一体何歳まで生きる必要があるのだろうか?

その答えは、単純計算で102歳。

100歳を超えて初めて、「65歳まで働いて良かった」と言える計算になる。

この数字を見て、あなたはどう感じるだろうか?

こう書くと、「マクロ経済スライドで全体の底上げが起きるなら、今提示されている65歳時点の『15.5万円』だって同じように上がるのではないか?」という視点を持つ方もいるかもしれない。

しかし、冷静に考えてみてほしい。

一度書面で「お約束」として見せた額面を、政府がわざわざ訂正して上げてくれるだろうか?

そもそも、一流大卒のエリート官僚たちが、マクロ経済スライドの影響を考慮せずに、あの「ねんきん定期便」に額面を印刷して国民に配っていると思いますか?

あの書面は「65歳まで働けばこれだけ増えますよ」と見せることで、少しでも現役世代の労働期間を延ばし、国庫からの年金支出を後ろ倒しにさせるための、緻密に計算された誘導弾です。

意図があったかどうかは分からない。

しかし結果として、「65歳まで働くのが当然」という空気を作っているのは事実だ。

間違った表示はしていない。それをどう捉えるかには関与しないということなのです。

生きがいを満たす「利他の精神」

「いや、お金の損得ではない。65歳まで働くのは、働くこと自体が生きがいだからだ」という意見もあるだろう。その考えはとても素晴らしい。社会との繋がりは健康長寿の秘訣でもある。

もし働く理由が「お金」ではなく「生きがい」なら、会社員以外にも選択肢はある。

地域活動でも、ボランティアでも、趣味のコミュニティでもいい。

真実に気づくということ

「月3万円も増えるから絶対に65歳まで働かなければ」

「みんなそうしているから」

そんな思い込みで、人生の中で最も心身ともにアクティブに動ける60代前半の5年間(最後の黄金期)を、満員電車や職場のストレスに捧げてしまうのはあまりにも勿体ない。

実態は、「5年働けば3万円増える」という美しい話ではない。「100歳まで生きなければ回収できない不条理なゲームに気付かず参加するか、それとも750万円と自由な時間を先にもらって人生の黄金期を満喫するか」という選択なのだ。

60代前半は、人生で最後の「健康な自由時間」かもしれない。

まだ歩ける。

海外にも行ける。

趣味も楽しめる。

両親も生きているかもしれない。

配偶者も元気かもしれない。

その5年間を、月1.7万円のために会社へ売るのか。

時間価値の残酷な真実もあるのだが……その話はまたの機会に。

皆が右を向いているからと、盲目的に従う必要はない。将来の数字は、額面だけでなく「その時のお金の価値」、そして「自分に残された時間(残高余命)」の両方を天秤にかけなければ見誤ってしまう。

常識という霧の向こうにあるこの真実に、一人でも多くの人が気づき、自分らしい本当の人生の計画を立て直すきっかけになれば、これほど嬉しいことはない。